基本中の基本を解説しています。
あなたも倍音人間になれる?
ここで解説しているホーミー発声法は、FMラジオ「モンゴル特集」(1999年5月〜7月)に出演したときに話した内容です。そのおさらいとして、ホーミー発声法の基本中の基本をまとめておきました。
母音の「ウ」と「イ」を使って説明します。この母音を意識するということが重要になりますよ。
【ホーミーって何?】
その前に、ホーミーが何のことか分からない人もいるかもしれませんね。簡単に説明しておきましょう。
ホーミーとは、人間の声だけで、2声または3声を同時に発声する唱法のことです。ドローン(原音となる低音部の声)と倍音(高音部のメロディー)を同時に発声します。ホーミーの発声法は5種類あると言われていますが、ここで紹介する発声法は中音部から高音部で行う一般的なタイプです。
【第1章】口の形を作る
この章は、口の中を楽器の共鳴胴のようにし、喉から出した声をここで響かせて倍音を作る基本となります。
@口の開き方(慣れてきたら自由に!)
まず、軽く「ウー」と発声してみてください。唇が少しすぼんだ状態で、唇や歯が軽く開きます。
A舌の位置(重要)
続けて「イー」を発声してみましょう。舌が上顎に移動しますので、そのまま押し付けてください。舌の左右を上の歯に押しつける感じです。つまり声の通り道を遮断し、上顎と舌の間に楽器の共鳴胴のような響く空間を作るのです。ただし、舌の先端部分だけは歯や顎に触れないようにします。この部分だけが唯一、声の通り道になります。
B舌の形(重要)
さらに、舌を軽くU字の形にしてみてください。このとき発音が「イー」から「ユー」に変わる感じにします。なんとなく倍音が出そうではないですか。
●この章のまとめです。口の開き方は「ウ」の発音、舌の位置は「イ」の発音でさらにU字にする、と覚えましょう。
【第2章】ドローンを発声する
ドローンとは低音の持続音のこと。つまり、2声のうちの原音となる方の声を作ります。
@喉から声をだす
ホーミーは日本語で、のど歌(スロート・シンギング)と訳されています。母音の「ウー」を使って、今度は喉から声を出してみましょう。
【ドローンに関するエピソード】
ドローンの良いお手本が意外と身近にあります。魚屋の前を通ったら、お兄さんが「いらっしゃい、らっしゃい〜」と喉に掛かる声で売り込みをしていました。なんと、語尾に母音の「イ」まで含まれているではないですか。このダミ声こそ、ホーミーのドローンなのです。英語の解説書には、「ポパイ」「DJのウルフマン・ジャック」の声とありました。
●この章のまとめです。ドローンは魚屋の客寄せの声、「いっらしゃい、らっしゃい」のダミ声を真似る、と覚えましょう。
【第3章】倍音を作る
いよいよ、ハイライトの章です。倍音とは、2声のうちの高音部となるメロディーのことです。
@小さな穴を作る
第1章の形を基本に、上顎と舌で通気口となる小さな穴を作ります。この穴は喉で発声したドローンの通り道になります。原音の声(ドローン)がこの小さな穴を通過するときに、倍音が生じて2声になるようにします。口笛をイメージしましょう。
【倍音に関するエピソード】
日本人の若き馬頭琴&ホーミー・プレイヤー、守田光輝から聞いた話です。女の子がピアスをはずして自転車に乗っているとき、まるで口笛のように「ピー」という音が耳元で聞こえるときがあるそうです。風がピアスの小さな穴を通り抜けるときに起こる現象とか。本当のような嘘のような話ですね。この「ピー」という音、正弦波というのですが、実はホーミーの倍音の正体なのです。これでもう理屈としてはお分かりになったと思います。ホーミーの倍音は声の通り道である「小さな穴」をいかに上手に作るかがポイントになります。
●この章のまとめです。ホーミーの倍音はピアスのような小さな穴を作って、そこに声を通すことで得られる、と覚えましょう。
どうですか。第3章まで読んで、何かとっかかりのようなものがつかめましたでしょうか。「できるかもしれない」と思ったら、ぜひ続けてみてください。
【第4章】実際にやってみよう
理屈では分かっても、そう簡単には行かないかもしれません。この章では試行錯誤する場合のポイントをいくつかまとめておきます。
@母音で発声する
始めは「ウ」と「エ」を連続させながら交互に発声してみてください。発声音が変化するときに、倍音が生じるようにしましょう。
次は、「ウ」と「イ」で同じようにトライしましょう。
少し感じがつかめてきたら、「ユ」と「イ」をスライドさせるように小刻み発声してみてください。ギターのチョーキングの要領です。
A顎、舌、歯を動かす
発声しながら口の中のいろいろな部分を微妙に動かしてみてください。これによって、倍音が生まれる通気口の小さな穴を調整します。
B声の響かせ方
喉から出た声は、上顎にぶつけるようなイメージで響かせると倍音が出やすくなります。
C喉を使わない
喉を使わないと言うと、「あれ!」と思うでしょう。最初のうちは「ダミ声」を出すということに、あまり神経を使い過ぎない方がいいようです。体験談ですが、喉を使うことにとらわれていたため、2声がなかなか出ませんでした。高めの音程で行うこと、声の通り道である「小さな穴」を作る方に神経を使ったほうがよいでしょう。
D穴の位置を変える
通気口となる小さな穴の位置は、舌の先端と上顎を使って正面に作るのが基本です。少し慣れてきたら、左や右に作る方法も覚えましょう。
Eビブラートをかける
喉を小刻みに震わせる方法も試してみてください。高音部で行い、ビブラートの揺れがなくなるくらい(喉を使っている感覚がなくなるくらい)小刻みにすると、2声が出やすくなります。
FCDを真似る
ホーミー修得の一番の近道は、なんと言ってもCDを聴いて真似ることです。最後に教則として利用したCDをご紹介しておきます。
●トゥバ「中央アジアからの歌声」※このCDの2曲目〜6曲目。←解説書の英文和訳(ホーメイ5種類の発声法)も参考になります。
●遊牧の地〜ヴァーチャル・トリップモンゴル※このDVDの冒頭は馬頭琴とホーミーの弾き語り。映像付きですので、涙が出るほど感動します。